「生命保険と医療保険って何が違うの?」と疑問に思ったことはありませんか?加入を検討する際、多くの人がこの2つの違いでつまずきます。
それぞれの保険は、対象となるリスクや保障の内容、加入の目的に明確な違いがあるため、自分に合った保険を選ぶには違いの理解が不可欠です。
生命保険は主に万が一の死亡時に備えるもので、遺された家族の生活保障を目的としています。一方、医療保険は病気やケガによる入院や手術といった医療費に備える保険です。
どちらも生活を守るために必要な保険ですが、その役割や活用の仕方にははっきりとした違いがあります。
この記事では、「生命保険」は死亡保険を指し、「医療保険」は民間の医療保険として定義し、それぞれの違いや保険の種類、選び方のポイントをわかりやすく解説します。
違いをしっかりと理解して、あなたのライフプランに最適な保険を見つけましょう。
生命保険は医療保険を含めた総称
生命保険と医療保険の違いに注目が集まりますが、実は医療保険も生命保険の一部に含まれています。生命保険は死亡保険だけでなく、医療保険や介護保険、年金型の保険など、さまざまな商品を含む広い概念です。
生命保険に加入すると、契約時に定められた保険料を支払い、病気やケガ、死亡などの万が一の際には、その保障内容に応じた保険金や給付金を受け取ることができます。
これらの給付金は、個人が支払った保険料だけでまかなわれるのではなく、加入者全体が支払った保険料をプールし、必要となったときに支え合うという仕組みで運営されています。つまり生命保険は、個人のリスクに備えると同時に、契約者同士が助け合う「相互扶助」の仕組みによって成り立っているのです。
このように、医療保険も含めたさまざまな保障を提供するのが生命保険の本質であり、それぞれの役割や目的の違いを理解したうえで選ぶことが大切です。
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生命保険(死亡保険)と医療保険の基本的な3つの違い
ここでは「生命保険」を死亡保険、「医療保険」を民間の医療保険として定義し、それぞれの違いについて、大きく3つにわけて解説します。
項目 | 生命保険 | 医療保険 |
---|---|---|
保障内容 | 死亡や所定の高度障害に対する保障 | 病気やケガに対する保障 |
目的 | のこされた家族の生活を支える | 入院・手術などの医療行為に伴う経済的負担軽減 |
保険金・給付金受け取り | 被保険者の家族 | 本人 |
1. 保障内容が違う
1つ目の違いは、保障の対象となるリスクです。
医療保険
医療保険は、病気やケガによる治療費の補填を目的としています。公的医療保険によって一定の医療費はカバーされますが、先進医療や差額ベッド代などは自己負担となるケースが多く、民間の医療保険に加入することでそれらの費用も保障されます。
たとえば、先進医療費の給付や、入院初日からの給付金など、商品によってさまざまな保障が受けられます。
生命保険
一方、生命保険は、被保険者が死亡または所定の高度障害になった際に保険金が支払われ、遺族や本人の生活を経済的に支えることを目的とした保険です。
たとえば一家の大黒柱に万が一のことが起きた場合、のこされた家族の生活費や教育費の一部を保障する役割を担います。特に子育て世代では、子どもの進学時期までの期間限定でも、加入を検討する価値があります。
このように、医療保険は「治療費の補填」、生命保険は「遺族の生活保障」と、対象とするリスクが明確に異なります。
2. 目的が違う
2つ目の違いは、保険が果たす目的です。
医療保険
医療保険は、入院・手術などの医療行為に伴う経済的負担を軽減することが主な目的です。生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査 p58」によると、短期入院であっても平均的な自己負担額は16万4,000円、通院費等を含めると25〜30万円かかるとされます。
さらに先進医療を受ける場合、自己負担額は施術内容によって数百万円にのぼる可能性があります。たとえば、厚生労働省の「令和5年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、陽子線治療は平均約266万円という報告もあり、そうしたリスクに備える手段として医療保険は有効です。
生命保険
生命保険の目的は、万が一の際に家族の生活を支えることです。共働き世帯ならどちらかの収入が残る可能性がありますが、片働きの場合はその収入源が失われることで生活が困難になるリスクが高まります。そのような経済的リスクを軽減するために、生命保険が家計の支えとなるのです。
医療保険は「医療費への備え」、生命保険は「家族の生活支援」と、必要とされる場面や役割が明確に分かれています。
3. 給付金の受け取り方が違う
3つ目の違いは、保険金・給付金の受け取り方と受取人です。
医療保険
医療保険では、被保険者本人が給付金を受け取るのが原則です。ただし、本人が請求できない場合には、指定代理請求人(通常は配偶者または三親等以内の親族)が受け取るケースもあります。
生命保険
生命保険の場合、基本的には死亡時に保険金を受け取るのは遺族(指定された受取人)です。受取人として指定できるのは、配偶者や2親等以内の血族が一般的ですが、保険会社によっては内縁の配偶者なども認められることがあります。
つまり、医療保険は「本人のための給付」、生命保険は「遺族のための給付」と、その受け取り手にも明確な違いがあります。
生命保険(死亡保険)の4種類の違い
生命保険と医療保険の違いについて解説しましたが、生命保険にもさまざまな種類があります。
生命保険の基本的な役割は、被保険者が死亡または高度障害状態になったときに保険金が支払われることですが、その仕組みや特徴は商品ごとに異なります。
ここでは代表的な4つの生命保険(死亡保険)のタイプについて、それぞれの違いを詳しく解説します。
どの保険が自分に合っているかを判断する際の参考にしてください。
1. 定期保険
定期保険は、一定期間だけ備えるシンプルな掛け捨て型の生命保険です。同じ保障内容の終身保険と比べると、割安な保険料で加入できます。
定期保険は、契約時に「10年間」「60歳まで」など保険期間を設定し、その期間内に万が一のことが起こった場合に保険金が支払われます。満期を迎えても保険金の支払いはなく、解約時も基本的に解約返戻金は発生しません。
保障は一時的ですが、保険料が抑えられるため、子育て中や住宅ローン返済中など、一定期間に高額な保障が必要な方に適しています。
2. 終身保険
終身保険は、一生涯の保障と貯蓄性を兼ね備えた生命保険です。保障は生涯続き、いつ死亡または所定の高度障害状態になっても保険金が支払われます。
さらに、途中で解約した場合には解約返戻金を受け取れる仕組みになっており、老後の資金や相続対策として活用されることもあります。
保険料は同じ保障内容の定期保険に比べて高めですが、長期的に保障を確保しながら資産形成を目指す方に向いています。
3. 収入保障保険
収入保障保険は、万が一の際に毎月一定額の保険金を年金形式で受け取れる、定期保険の一種です。
この保険では、死亡や所定の高度障害が発生した際に、遺族が毎月一定額の保険金を年金形式で受け取れます。保険期間の残り年数に応じて総受取額は減少していくため、必要な時期に効率よく備えることができます。
解約返戻金や満期保険金は基本的にありませんが、生活費を分割で受け取れる点が特徴です。家族の生活を月単位で支えたい方に適しています。
4. 養老保険
養老保険は、保障と貯蓄の両方を兼ね備えた生命保険です。
契約時に定めた期間内に死亡または高度障害となった場合は死亡保険金が支払われ、無事に満期を迎えた場合でも同額の満期保険金を受け取れます。
そのため、万一の保障と計画的な資金準備の両立が可能です。定期保険よりも保険料は高くなりますが、確実なリターンを重視する方に向いています。
医療保険の種類と公的医療保険制度との違い
医療保険には主に「定期医療保険」と「終身医療保険」があり、それぞれ保障される期間や保険料の仕組みに違いがあります。
また、これらの民間医療保険と、日本で誰もが加入している公的医療保険制度(健康保険)には保障内容や加入の自由度に明確な差があります。
ここでは医療保険の種類の違いについて解説していきます。
定期医療保険
定期医療保険は、一定期間のみ保障が続く掛け捨て型の医療保険です。契約時に「10年」「60歳まで」といった保障期間を設定し、その期間内に入院や手術などが発生した場合に給付金を受け取ることができます。
保険料は加入時の年齢により決まり、年齢が若いほど割安になりますが、更新のたびに年齢に応じて再計算されるため、継続するほど保険料は上昇します。短期間の保障を確保したい方や、家計の負担を抑えたい方に向いています。
終身医療保険
終身医療保険は、一生涯の保障が続き、保険料が変わらない安定型の医療保険です。契約内容を変更しない限り、保険料は契約時のままで固定されます。
保険料の支払い方法には、一生涯支払う「終身払い」と、一定期間で払い終える「短期払い」があり、終身払いは月々の保険料を抑えられる一方、短期払いは払込終了後の保険料負担がなくなるメリットがあります。
長く安定した保障を求める人に適した保険です。
医療保険と公的医療保険制度の違い
医療保険は民間の任意加入型、公的医療保険制度はすべての国民が対象となる義務的な制度です。日本では「国民皆保険制度」が採用されており、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入しています。
この制度では、医療機関での自己負担が1〜3割に抑えられ、高額療養費制度などにより経済的負担も軽減されます。
しかし、公的医療保険の対象外となる先進医療や差額ベッド代、入院時の食事代などは全額自己負担です。
一方、医療保険(民間)は、そうした公的制度でまかないきれない部分を補完する役割を持ちます。
入院や手術の際に給付金を受け取れるほか、がんや特定疾患向けの特約を付けることで、より手厚い保障を得ることが可能です。医療保険を活用することで、予期せぬ出費に備え、家計の安定を図ることができます。
このように、医療保険は保障期間の違いによって2種類に分かれ、公的医療保険とは目的とカバー範囲に違いがあります。自分のライフスタイルやリスクに応じて最適な選択をすることが大切です。
生命保険と医療保険はどっちに入るべきか
生命保険と医療保険、それぞれの違いを理解したうえで、自分に合った保障を選ぶには、ライフプラン・保険料と保障内容・組み合わせ方の3つの視点が重要です。
保険は万が一に備える大切な制度ですが、選び方を間違えると「必要なときに保障が足りない」「保険料が無駄になる」といった失敗につながることもあります。
ここでは、保険を選ぶ際に考慮したい3つの観点から、どのように生命保険と医療保険を検討すべきかを解説します。
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今後のライフプランを想定して考える
保険を選ぶ第一歩は、自分と家族のこれからの人生設計(ライフプラン)を明確にすることです。
就職・結婚・出産・子どもの進学・住宅購入など、人生にはさまざまなイベントがあり、それぞれに大きな費用が発生します。こうしたイベントに備えるためには、必要な保障額や内容を事前に見積もっておくことが大切です。
たとえば独身のうちは死亡保障の必要性は高くありませんが、結婚や子どもができたタイミングでは、パートナーや家族の生活を支えるための保障が必要になります。このような場合は、医療保険に加えて、定期保険や終身保険といった生命保険も併せて検討することが有効です。
保険料と保障内容で考える
日常生活の中にも病気・ケガ・死亡といったリスクは存在しており、保険選びでは公的制度との違いを踏まえたうえで、保険料と保障内容のバランスを見極める必要があります。
まずは公的医療保険制度でどのような保障が受けられるかを確認し、不足する部分を医療保険で補うのが基本です。
たとえば、小さな子どもがいる家庭では、親に万が一があった際の経済的損失が大きいため、生命保険(死亡保険)の加入が現実的な選択肢となります。
また、医療保険においては、入院費だけでなく、治療により働けなくなった場合の生活費、通院費、付き添いの家族の負担なども考慮が必要です。
特に自営業者は傷病手当金や有給休暇がないため、会社員以上に医療保険の重要性が高くなります。
必要であれば両方を組みわせてみる
希望する保障が1つの保険でまかなえない場合は、生命保険と医療保険を組み合わせることで、より柔軟に対応できます。
たとえば、定期保険で一定期間の死亡保障を確保しつつ、医療保険で入院や通院時の保障を備えるといった方法です。ただし、過剰に加入してしまうと保険料が高額になり、家計を圧迫するリスクもあります。
さらに、生命保険は損害保険と異なり、複数の契約で保障が重複しても保険金をすべて受け取れる場合がありますが、あまりに重複が多いと契約審査で不利になることもあるため注意が必要です。
契約時には、保障内容や免責条件をよく確認し、必要最低限で最大限の効果が得られるように設計しましょう。
複数の保険を適切に組み合わせることで、保障の抜け漏れを防ぎつつ、無理のない保険料で安心を手に入れることができます。
生命保険と医療保険における違いのまとめ
生命保険と医療保険の違いを理解し、自分に合った保障を選ぶことは、将来の安心につながります。
本記事では、生命保険と医療保険の基本的な違いや種類ごとの特徴、そして保険選びの考え方について詳しく解説しました。一般的に「生命保険」は、死亡保険・介護保険・生存保険など、生命に関する保障を広く含む言葉ですが、医療保険と比較される場面では主に「死亡保険」を指すケースが多いです。
一方、医療保険は病気やケガによる入院・手術といった治療費の負担をカバーする保険であり、生命保険とは保障の目的や内容に明確な違いがあります。
とはいえ、それぞれの保険には多くの種類があり、自分にとって最適な保険を選ぶのは簡単ではありません。
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さらに、各商品の補足説明や見積もりの作成は専門の営業担当がサポートするため、納得感のある保険選びが可能になります。
生命保険と医療保険の違いを正しく理解し、自分のライフプランやリスクに合った保険を選ぶことが、将来の安心と備えにつながります。判断に迷ったときは、プロの力を借りながら無理なく納得できる選択をしていきましょう。