「生命保険には入らないほうが得」「公的保障や貯金でなんとかなる」そう思っている人は少なくありません。しかし、そうした考えが後悔につながることもあります。
病気やケガ、予期せぬ事故、突然の入院や死亡…。実際に起きてから「やっぱり保険に入っておけばよかった」と悔やんでも、取り返しがつかないケースもあります。
たしかに日本には公的医療保険制度があり、一定の医療費は保障されます。しかし、それだけではカバーしきれない出費や、入院中の収入減など、生活への影響は無視できません。
また、残された家族に経済的な負担を残してしまうことも、決して他人事ではありません。
この記事では、生命保険に入らないことで後悔した実例をもとに、保険に加入しておくべき人の特徴や判断のポイントをわかりやすく解説します。「自分は大丈夫」と思っている方ほど、ぜひ最後までお読みいただきたい内容です。
生命保険に加入しなくて後悔した3つの事例
生命保険は「自分にはまだ早い」「必要性を感じない」といった理由で後回しにされがちです。しかし、いざというときに備えていなかったことを後悔するケースは少なくありません。
特に、生命保険に入らないまま病気や事故、思わぬトラブルに見舞われたときの経済的・精神的なダメージは想像以上に大きくなります。
ここでは、実際に「生命保険に入らないことで後悔した」体験談を3つのパターンに分けてご紹介します。
入院手術で10万円以上の自己負担が発生した事例
健康そのものだった会社員のSさん(30代男性)は、ある日、腹痛で病院に行ったところ急性虫垂炎(盲腸)と診断され、即日入院と手術に。入院は1週間に及び、個室しか空いていなかったため差額ベッド代も発生。
さらに、術後に一時的な通院治療も必要となりました。
医療保険に加入していなかったSさんは、合計で10万円以上の自己負担が生じました。会社の有給も使い果たし、収入の減少と支出の増加が重なったことで、貯金に大きなダメージが。
「まさか自分がこんなことで入院するなんて…」と、医療保険に入らない選択をしたことを強く後悔しました。
保険の再加入ができなくて後悔した事例
主婦のNさん(40代)は、独身時代から加入していた定期保険が満期を迎えるタイミングで、更新せずに一度解約を決断。家計の見直しの一環で、「しばらく病気とは縁がないだろう」と考えていたのです。
しかし、数ヶ月後に健康診断で生活習慣病の兆候が見つかり、再加入を申し込もうとしたものの、告知内容が原因で希望していた保障が付けられないという結果に。
「あのとき保険料を節約しようとしなければ…」と、保障を切らしたことを悔やんでいます。
自営業で働けなくなり生活費に困窮した事例
建設業で働くYさん(50代男性)は、現場での作業中に足場から転落して骨折。労災保険の給付はあったものの、療養とリハビリで3ヶ月以上現場復帰できず、手取り収入は半減。
しかも、自営業に近い働き方だったため、収入減の影響はダイレクトに生活費を圧迫しました。
Yさんは、働けなくなるリスクに備える就業不能保険などには加入しておらず、貯金を切り崩してなんとか生活をつないだものの、「怪我が長引いていたらどうなっていたか」と不安を感じたそうです。
その後、就業不能保険と医療保険の加入を決意。「もっと早く備えておくべきだった」と痛感したと語ります。
これらの事例から、予期せぬ病気や事故が起こった際、生命保険に加入していないことで経済的な負担が大きくなる可能性があることがわかります。自身や家族の将来のためにも、生命保険の必要性を再考し、適切な保険への加入を検討することが重要です。
生命保険(医療保険)で後悔するお金のこと
医療保険に「入らない」選択をした人が、いざというときに「後悔」してしまうケースは少なくありません。特に入院や手術などが発生すると、医療費の自己負担や収入減が家計に重くのしかかります。
ここでは、生命保険や医療保険に加入していない場合に起こりうる経済的リスクについて、代表的な3つの側面から解説します。
医療保険に入らない場合の平均負担額
公的医療保険がある日本では、一般的に医療費の自己負担は1~3割に抑えられていますが、それでも医療費が高額になれば負担額は決して軽くありません。
たとえば、70歳未満の中所得層では、高額療養費制度を利用したとしても月額約8~9万円程度の自己負担が生じるケースがあります。
さらに注意すべきは、公的医療保険の対象外となる費用です。たとえば以下のような項目は全額自己負担となります。
自己負担となる費用項目 | 平均額の目安(参考) | |
---|---|---|
差額ベッド代(1日) | 約6,700円 | |
入院中の食事代 | 1日約460円~(所得に応じて変動) | |
日用品・交通費など | 数千円~数万円 | |
先進医療技術料 | 陽子線治療 | 約270万円 |
重粒子線治療 | 約310万円 |
※参考:令和6年7月 第548回中央社会保険医療協議会・主な選定療養に係る報告状況|厚生労働省
※参考:中央社会保険医療協議会 令和年6月30日時点における先進医療に係る費用|厚生労働省
こうした出費が重なると、1回の入院で20万円前後の自己負担になることも珍しくなく、医療保険に「入らない」という判断が後悔につながる場合もあるのです。
高額療養費制度でも自己負担を避けられない場合がある
出典:2022(令和4)年度生活保障に関する調査 67ページ
高額療養費制度はたしかに医療費の一定額を超えると還付される仕組みですが、適用されるのはあくまで「健康保険適用範囲内」の治療費に限られます。差額ベッド代や先進医療の費用などは含まれず、患者が全額を自己負担しなければなりません。
さらに、入院日数が長引いた場合、その費用負担は膨らみます。生命保険文化センターの調査(2022年度)によると、入院1回あたりの自己負担額は平均で約19.8万円。特に10万円~20万円未満の負担が生じた人が約34%を占めています。
これらの事実からも、保険に加入していないことで「入らなければよかった」と後悔する声が後を絶たないのが実情です。
入院中の収入源は否めない
出典:2022(令和4)年度生活保障に関する調査 70ページ
さらに見落としがちなのが「収入減少」のリスクです。大黒柱が入院した場合、治療費だけでなく、収入が止まることによる家計へのダメージも発生します。
生命保険文化センターの同調査では、入院によって収入が減少したと回答した人の平均的な「逸失収入額」は約30.2万円。1日あたりに換算すると、約21,000円の収入が失われている計算です。差額ベッド代などの実費も加味すると、1日あたり約27,000円の損失が発生することになります。
入院が長引けばその影響はさらに拡大し、医療保険に加入していないことを深く後悔する事態になりかねません。
実際に生命保険に入っている人の割合
生命保険に「入らない」という選択がどのような結果をもたらすのかを考える上で、まずは実際の加入状況を知ることが大切です。生命保険文化センターの調査(2022年度)によれば、日本人のおよそ8割が何らかの生命保険に加入しています。
ここでは、生命保険の加入率がどのように推移してきたのかを時系列で整理しながら、年収やライフステージによる違いにも注目し、生命保険に加入する人の傾向について解説します。
生命保険の加入率の推移
出典:2022(令和4)年度生活保障に関する調査 206ページ
生命保険文化センターの時系列データを見ると、2001年以降、生命保険の加入率は約8割前後で推移しています。特に注目すべきは、2010年を境に女性の加入率が男性を上回るようになった点です。
背景には、かつては家計の大黒柱として男性が加入することが一般的だったのに対し、近年は女性の社会進出や医療リスクへの意識の高まりが挙げられます。
例えば乳がんや子宮頸がんなど女性特有の疾病に備える目的で、女性の保険加入が拡大しているのです。
こうした傾向からも、将来的に「保険に入らないことを後悔する」リスクは、男女問わず無視できない状況といえるでしょう。
年収別の加入率の割合
出典:2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査 33ページ
世帯年収が高くなるほど、生命保険の加入率も高まる傾向があります。
生命保険文化センターの2024年調査では、年収300万円未満の世帯では加入率が約7割にとどまるのに対し、1,000万円以上では9割近くが加入しています。これは、経済的余裕のある世帯が老後資金の準備や資産形成の一環として保険を活用していることが一因です。
一方、保険料が家計に負担となる世帯では、加入を見送るケースが多く、結果として「万が一の備えがなくて後悔する」リスクを抱えることになります。
ライフステージ別の加入率の割合
出典:2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査 255ページ
生命保険の加入率は、ライフステージの変化に伴って大きく変動します。とくに結婚や出産を経て家族が増えると、リスクへの備えとして生命保険の必要性を感じる人が増える傾向にあります。
生命保険文化センターの同調査によると、ライフステージ別生命保険加入率は未婚の方は約6割程度、既婚で子どものいない方で約8割、既婚で子どものいる方の場合約9割近くとなっています。
このように、未婚世帯や若年層では加入率が比較的低いものの、家族を持つ年代にかけて生命保険のニーズが高まり、ライフステージの節目ごとに保険の見直しが重要になるといえるでしょう。
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生命保険に入らないと後悔する人の特徴
生命保険に入らないという選択が、将来的な後悔につながるケースは少なくありません。とくにライフステージや職業、貯蓄状況によって、そのリスクは高まります。
ここでは、生命保険に入らないことで後悔しやすい人の代表的な特徴を紹介します。
扶養すべき家族がいる人
家族を支える立場にある人にとって、生命保険は将来の備えとして非常に重要です。世帯主が万が一亡くなった場合、のこされた家族は日々の生活費や教育費など、経済的に大きな負担を抱えることになります。
死亡保障がある定期保険や終身保険に加入しておけば、遺族の生活費を補填できるだけでなく、安心して生活を続けることが可能です。
また、病気やケガで入院した場合の医療費、がん治療にかかる高額な費用なども想定し、医療保険やがん保険で生存中の支出に備えておくことも必要です。
家族の将来を守るために、保障内容と現在の家計状況を照らし合わせて、必要な補償が漏れていないかを定期的に確認しておきましょう。
貯蓄が少ない or 不安定な収入の人
経済的な余裕がない方こそ、生命保険の備えが欠かせません。貯蓄が十分でない場合、病気やケガで働けなくなった際の生活費や医療費が、直接的な家計の打撃となります。
とくに傷病手当金や生活給付金などの公的制度だけでは、医療費以外の日常生活費までをまかなうのは難しいケースもあります。
たとえば、家賃やローン、食費、教育費といった毎月の固定支出は、収入が途絶えたとしても容赦なく発生します。そのようなリスクに備えて、医療保険や就業不能保険といった保険商品を活用することで、金銭的な後悔を未然に防ぐことができます。
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自営業・フリーランスで社会保障が手薄な人
会社員と異なり、自営業者やフリーランスは公的保障の範囲が限られているため、生命保険の必要性がより高まります。
会社員と自営業・フリーランスの受けられる社会保障の違いは以下の通りです。
会社員 | 自営業・フリーランス | |
---|---|---|
健康保険 | 傷病手当金 出産手当金など |
なし |
公的年金 | 国民年金 厚生年金 |
国民年金 |
労災保険 | 療養補償給付 休業補償給付など |
なし |
雇用保険 | 失業等給付 育児休業給付など |
原則なし |
たとえば会社員が加入する健康保険には「傷病手当金」や「出産手当金」といった所得補償制度がありますが、国民健康保険にはこうした仕組みがなく、病気や出産などで収入が止まった場合も自力でしのがなければなりません。
また、国民年金だけでは老後の生活資金として十分とは言い難く、遺族年金も厚生年金加入者に比べて受給額が少ない傾向にあります。
こうした背景から、いざというときに「入らないで後悔した」とならないよう、保障の足りない部分を民間保険で補う意識が求められます。
生命保険に入らなくても後悔しない人
生命保険はすべての人にとって必須というわけではありません。入らないという選択が適切な場合もあります。大切なのは、自分のライフスタイルや経済状況を正しく把握し、本当に備えが必要かを見極めることです。
ここでは、生命保険に入らなくても後悔しにくい人の特徴について解説します。
十分な資産や備えがある人
すでに十分な貯蓄があり、医療費や老後の生活費といった将来的なリスクに備えられている人は、生命保険に入らなくても困ることは少ないでしょう。
生命保険はあくまで“万が一の事態”に備える手段であり、リスクへの対応力がすでにある場合、保険料を払ってまで加入する必要性は低いといえます。
たとえば、貯蓄で住宅ローンの残債や治療費をまかなえる場合や、遺族が経済的に自立している場合は、死亡保険の優先度は下がります。
「本当に生命保険が不要かどうか判断に迷う」という方は、保険相談サービスを活用するのも一つの手段です。プロの視点から現在の資産状況を評価してもらい、保険で補うべき部分があるかを客観的に見てもらうことができます。
独身で扶養家族がいないケース
独身で扶養すべき家族がいない方も、生命保険に入らないという選択が現実的な場合があります。特に、会社員で健康状態に問題がなく、ある程度の貯蓄がある方であれば、医療費や急な出費も公的保障や自己資金でまかなえるケースが多いです。ただし、毎月の収支がギリギリだったり、浪費癖があって貯蓄が少ない人は要注意です。
たとえば、病気やケガで働けなくなった場合にすぐに生活が立ち行かなくなる可能性があるため、医療保険や就業不能保険など、最低限の保障は検討しておくと安心です。
生活費の半年分以上の貯蓄がない方は「備えのないままでは後悔するかもしれない」という視点を持って、改めて検討してみてください。
まとめ|生命保険に入らないで後悔しないために
生命保険に入らないという選択が、後に大きな後悔につながることもあります。本記事では、生命保険に未加入だったことで実際に困った事例を紹介し、どんな人が後悔しやすいかを解説しました。
生命保険は、将来の不測の事態に備えるための重要な手段です。たしかに日本の社会保障制度は充実していますが、それだけで万全とはいえません。医療費や収入減への備え、遺族への保障といった目的で、生命保険が果たす役割は大きいといえるでしょう。
特に、扶養家族がいる方や貯蓄に不安がある方は、生命保険に入らないという判断を安易に下すことは避けたいところです。
「自分には本当に必要なのか」「どの保障が最適なのか」と迷ったときは、プロの力を借りるのも賢明です。保険相談サービスを利用すれば、客観的な視点からあなたに必要な保険が何かを明確にしてもらえます。
生命保険に入らなかったことで後悔しないために、今のうちにしっかりと見直しておきましょう。